エヴァ観た

初めてエヴァを観たのは、確か17歳の頃だったと思う。それまで私はそんなにアニメに興味がある方ではなかったのだけど、当時付き合っていた男の子が「面白いよ」と言ってくれてアニメシリーズを一緒に観た。

 

観終わった後に、「なるほど、これは確かに流行るな」と思ったのを覚えている。途中の展開のアツさと、終わり方の歪さは今でも印象に残っている。アニメ=萌えアニメ、とそれまで思っていたのを、エヴァはひっくり返してくれた。(萌えアニメも好きなんですけどね)

 

その後旧映画版も観て、考察もそれなりに読んだ。なんというか、絶望的で目を背けたい感じはあったのだけど、最後にシンジくんが他者とつながり合うことを選んだ、という意味ではほのかにハッピーエンドと言えなくはないのかな・・・とも思っていた。

 

大学に入る頃には、もう序が公開されていて、ただ、序が公開された時点では観なかった。展開が今までのものと全然違い、面白いらしい、とレビューを見て公開当日に新宿まで観に行ったのは破からだ。面白かった。めちゃくちゃ熱くて、心躍った。

Qを観たのも大学生の頃だった。その頃にはもう留学を考え始めていて、おそらく最終作は劇場では観られないんだろうなと思った。

 

大学を卒業し、アメリカに行って、それまでの3作を一緒に観た男の子とも別れた。その後付き合った男の子もエヴァは好きで、よく話した。

 

シンは、いつまでも公開されなかった。

 

私は、意味がわからない作品、解釈が難しい作品というものが嫌いじゃない。というか、好きだ。クラシックや現代音楽を相手にしているうちに、意味がわからないものに自分なりに意味づけしていく作業は特別に楽しいものである、と思うようになっていたから、エヴァのことも同じように楽しく感じていた。

 

だから、Qで感じた不穏な空気から最終作にかけてミステリアスな展開になったとしても、それはそれで良いや、と思っていた。

 

私は修士号をとった。その後博士号を取っている間にシンゴジラを観た。面白かった。庵野監督が鬱になって大変だった、というような情報も得たので、無理をしないでほしいなという思いも強かった。

 

シンが公開されないまま、私は博士になって、日本で働き始め、そしてエヴァが公開された。

 

公開されて最初の一週間は忙しかったので行けなかったが、少しするとちょうど時間ができたので観に行った。

ポップコーンとジンジャーエールを手に持って座り、10年以上ぶりのエヴァに久しぶりに浸った。

 

2時間35分はあっという間だった。何回か泣いて、観終わった後はぐったりした。

そして、なんだか救済された気分になった。

 

本当にありがとう、と思った。エヴァの根幹には父と息子の物語があったこと。アスカとシンジをくっつけないで、解放したこと。レイとカヲルがユイとゲンドウでもあり、その二人がずっとシンジを助けてくれていたこと。ミサトさんとリツコに流れていた信頼関係は変わらなかったこと。人がお互いに向き合い、理解し合おうと苦しむその姿への祝福の物語だったこと。

 

エヴァはずっと、大人になれない苦しみの物語だった。大人は汚い、というメッセージがどこかいつも根底に流れていた。成長できない、ずっと苦しい14歳に留まっているその焦燥にみんな共感した。

だけど、この最終作で、エヴァは成長すること、先に進むことを肯定してくれた。シンジとアスカが離れる展開には、それが強く出ていたと思う。私はシンジとアスカの組み合わせが大好きだった。本当にベストコンビだったと思うし、仲良しな二人のイラストや漫画を観るのも大好きだった。でも、それでも、今回二人がくっつかなくて良かったなと思う。

 

14年の時が経とうと、アニメの世界だったらヒロインは待っていてくれるかもしれないけど、アスカは待たないで先に行った。その事実が、アスカをただの萌えキャラにしないで「人」にしたと思うから。

ミサトさんがシンジにキスしなかったのも、リツコとゲンドウの不倫がぼやかされていたのも、良かった。旧映画版でのそれはとても不自然だと思ったから。それはそれで面白かったけど、今作でのミサトさんやリツコは、コマのように動かされるキャラじゃなくて、「人」になってた。

 

キャラクターがちゃんとみんな「人」になったのは、きっとこの映画が変化し成長することを肯定するものだったからだと思う。そしてそれは同時に、観客の変化も肯定してくれた。アスカとシンジが別れを告げるシーンで、私はかつてエヴァを一緒に観たり語ったりした男の子を思い出したし、そういう人はきっと私だけじゃないと思う。

エヴァが肯定してくれたのは、私の変遷でもある。自分が通ってきた道のりや失敗や苦難を、あの映画は肯定してくれた。それは、17歳からずっと観てきた作品だからこそできるすごい偶然の技でもあり、そしておそらく製作チームの狙いでもあったんだと思う。

 

ストーリーとしては、お母さんの愛が最後に少年を救い、その後に進ませる、という意味では「ハリー・ポッター」を始め数多いし、ループ系の作品も最近は多い。だから、エヴァのストーリーラインが特別新しいというものではなかった。

 

だけど、これだけ何度も視聴者も取り込まれ、悩まされ、迷わされて25年かかった末に完結した作品というのは、ほとんどないのではなかろうか。

その最後が、人の生きることを肯定した人間賛歌だったこと、何気ない日常を愛する終わり方だったことはとても良かった。

 

改めて、ありがとう、さようなら、全てのエヴァンゲリオン

 

 

「さようならって何?」

「また会うためのおまじないよ。」